大証2部に一時上場し、「大阪発の先端企業」と注目を集めたICカード製造のベンチャー企業「日本エルエスアイカード」(大阪市浪速区)=05年6月に事実上倒産=で、同社名義の小切手を不正に振り出して会社に多額の損害を与えたとして、大阪府警は4日、前社長笹尾明孝容疑者(53)=住所不定=と元社長室長佐々木尊容疑者(40)=東京都港区南麻布4丁目=の2人を商法の特別背任容疑で逮捕した。笹尾容疑者は「小切手の金額も日付も違う。複雑なのでゆっくり思い出す」などと容疑を否認、佐々木容疑者は容疑を認めているという。
同社では、笹尾容疑者が社長に就任した後の04〜05年にかけて、社債の発行を巡ってもトラブルが相次いでおり、府警はこうした不透明な経緯についても捜査を進める。
捜査2課の調べでは、笹尾容疑者は昨年1月、知人の金融ブローカー2人に対し「株でもうけないか」などと話を持ちかけ、株式取得の資金として約1億6000万円を借り入れた。しかし、翌月の期日までに返済できず、佐々木容疑者に会社事務所内の金庫から会社名義の小切手帳を持ち出させ、同4月、返済猶予のための担保として、取締役会の承認を得ずに額面約2億円の小切手1枚を差し入れ、会社に損害を与えた疑い。
日本エルエスアイカードは1984年11月、カードを端末にかざすだけでデータの読み取りができる「非接触型ICカード」の開発・販売を目的に設立された。97年3月、大証がベンチャー企業の株式公開を目的に新設した特別2部市場(98年12月同市場廃止により大証2部に移行)に第1号として上場した。
しかし、その後取引先の破綻(はたん)などで業績は低迷し、04年10月の臨時取締役会で笹尾容疑者が社長に就任。東京佐川急便事件の際、同社から債務保証を受けて株の仕手戦などに加わり、92年に約400億円の負債を抱えて倒産した金融会社の社長の経験もあった。関係者によると、技術系ベンチャー企業には無縁で、事業には関心を示さず、社長就任後もほとんど出社しなかったという。
社長就任の翌月に実施した新株予約権付き社債(15億円)の発行では、引受先の投資会社からの入金がなく、発行を取り消し、大証が異例の改善報告書の提出を求めた。
その後も貸付金の焦げつきなどのトラブルが相次ぎ、昨年6月、別の小切手2枚が不渡りに。笹尾容疑者は「小切手は紛失したもので、警察に告訴状を出す」などと説明していた。不明朗な資金繰りに疑念を抱いた監査法人が監査報告書に意見を表明せず、大証が翌月、上場廃止を決めた。
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