強度と染色性の両立を実現する、常圧下で染色可能なカチオン可染ポリエステルポリマー「V4」の開発および繊維の展開について
帝人ファイバー株式会社(本社:大阪市中央区、社長:亀井 範雄)は、このたび、常温・常圧下での染色が可能で、繊維強度を保持しながらも、染色性が良好なカチオン可染ポリエステルポリマー「V4」を開発しました。「V4」ポリマーを使用したカチオン可染ポリエステル繊維(*1)は、単糸繊度が1.0dpf(*2)以下のハイマルチ糸(超極細糸)や異型断面糸(断面が円形ではない糸)の製糸と、常温・常圧下での濃染性および鮮明性に優れた染色加工の両立が可能となります。
帝人ファイバーでは、既に「V4」ポリマーを使用した原糸の開発も進めており、2010年7月より、婦人・インナー・スポーツなどの衣料用途からインテリアなどの資材用途まで、幅広い用途に向けて原糸販売を本格展開するとともに、テキスタイルとしても展開していきます。
なお、帝人ファイバーは構造改革に取り組んでおり、「グローバル最適生産体制構築」の一環として、国内で生産していたポリエステル繊維をタイに移転し、基幹生産拠点とすることを進めていますが、このたび開発した「V4」ポリマーによるカチオン可染ポリエステル繊維は、タイのグループ会社(TEIJIN (THAILAND)LIMITED)で生産を立ち上げる第1弾の新規素材であり、帝人ファイバーの今後の主力素材の1つとして、グローバル展開を図っていきます。
詳細は以下のとおりです。
(*1)カチオン可染ポリエステル繊維:染料の1つであるカチオン染料に染まるポリエステル繊維。通常のポリエステル繊維はカチオン染料には染まらないため、テキスタイルを生産する際、通常のポリエステル繊維と染め分けることで柄を幅広く表現できる。
(*2)dpf:繊維1本の太さを表す単位、denier per filamentの略。1dpfは約10ミクロン(100分の1mm)。
1.開発の背景
(1)カチオン可染ポリエステル繊維は、発色性が良く、染色堅牢度にも優れているため、幅広い用途で使用されていますが、高温・高圧下での染色加工が必要となります。そのため、高温・高圧下で強度や風合いの劣化を引き起こしやすいウールやシルクなどの天然繊維や、ポリウレタンなどの弾性糸との複合が難しく、100℃以下の常温・常圧下でも染色加工が可能なカチオン可染ポリエステル繊維に対するニーズが国内外で高まっていました。
(2)一方、これまで常温・常圧下で染色可能なカチオン可染ポリエステル繊維は、通常のポリエステル繊維に対し、一般的に繊維強度が20〜30%低くなるため、差別化糸を製糸することが難しく、展開可能な用途や商品アイテムに限界がありました。
(3)こうした中、帝人ファイバーでは、ポリマー技術を駆使して分子レベルの改質を行うことにより、常温・常圧下での染色が可能で、繊維強度と染色性の両立を可能にするカチオン可染ポリエステルポリマー「V4」の開発に成功しました。
2.「V4」の特徴と技術概要
(1)常温・常圧下の染色加工において濃染性と鮮明性に優れるだけではなく、同等の機能を有するカチオン可染ポリエステル繊維としては最高レベルである3.8cN/dtex(*3)以上の繊維強度(通常のポリエステル繊維と同等)を実現しました。
(2)製糸性や異型保持性にも優れるため、単糸繊度が1.0dpf以下のハイマルチ糸や異型断面糸の製糸が容易となり、様々な銘柄の原糸を生産することが可能になりました。
(3)繊維強度に加え、繊維自体の耐熱強度も向上したため、捲縮加工が可能となり、仮撚加工糸としての展開も可能となりました。
(4)100℃以下の常温・常圧下でも濃色で鮮明な染色加工が可能なため、高温・高圧下での加工条件(*4)に比べ、染色時の電力や蒸気エネルギーを30%削減、CO2排出量を25%削減(当社測定による)することができます。
(*3)繊維の強度を表す単位。糸を引っ張って切れた時の強力(cN:センチニュートン)を、糸の太さ(dtex:デシテックス)で割って単位太さあたりの強力で表したもの。
(*4)高温・高圧下での加工条件:130℃、1.3気圧。一般的なポリエステル生地の染色加工条件。
【繊維強度と濃染性の関係】
※ 関連資料参照
3.展開計画
(1)「V4」シリーズとして、四つ山扁平断面糸「ウェーブロン V4」を皮切りに、順次ラインナップを追加していくとともに、染色加工時の環境負荷を低減するエコカラー素材としても訴求を図っていきます。
(2)2010年7月より本格展開を開始し、3年後の2012年度には1000トン/年の展開を目指します。
4.特許出願
国内・海外特許 20件
※「ウェーブロン」は帝人ファイバー株式会社の登録商標です。
以上
※ 参考資料は、関連資料参照